「あなたは何者なのか」が問われる事態
日本が占領されて、「今日からあなたたちは〇〇国の〇〇人です」と宣言される。
日本国の制度はすべて廃止され、〇〇国の制度に全て変わる。
世界各地で繰り広げられる戦争や、戦争につながりかねない緊張、先の太平洋戦争の惨禍…
それらのニュースに触れて、ふと想像しました。
しかし、これ以上深く想像することは、おそろしくてできませんでした。
心理的にたいへんな危機です。
ただ、心理的に似た事態なら今の日本でもよくあると、私は思うのです。たとえば、
A社がB社に吸収合併される。
A社社員はB社社員となる。B社制度で格付けや給与等が改めて決まる。
会社の経営者に外部の方が就任し、経営方針と行動指針を180度変革する。
30年で築き上げた見識やノウハウは時代遅れと評され、一新を指示された。
大恋愛の末に女性が結婚する。自分の料理で夫を喜ばせる日々の生活を描く。
結婚すると嫁と呼ばれた。夫の母は、日々料理を指導し点検した。
女性は結婚する。
夫の姓を名乗る。夫は特に当然と思っている。
妻は、夫が定年退職した夜に離婚を切り出す。永年連れ添った夫婦は離婚する。
老後を夫婦ふたりでゆっくり楽しく過ごそうと、夫は密かに貯金していた。
「自分は何者か」という問いへの答えを、人は生きていく中で次第に固めていきます。例えば、
日本人、A社社員、仕事の出来る人、Bさんの愛妻、料理が得意、C家の娘、Dさんの夫…
意識的ばかりでなく無意識的の答えもあり、たくさんの答えが固まっています。
その中には、「絶対」「変わることがない」と思い込んでいるものもあるでしょう。
自分の何者像を他人から変えられた時、憤りや恐怖、絶望や不安や悲しみなどで当惑するでしょう。
時にはその最中に、それに適応しないと生きていけないところに追い込まれたりします。
その苦しさなどを想像すると実におそろしく、鈍感になって適応しようとすることもあります。
私や私の身近な人たちにも、身に覚えがあります。
あなたやあなたの身近な人たちが、これまで思い当たることはないでしょうか。
このとき、「自分とは何者か」という問いが、改めて突きつけられています。
侵略されている地域の方が兵士となって侵略者に戦いを挑む時、
彼らは憤りや恐怖、不安などに立ち向かいながら、
「自分は〇〇人である」という確固たる答えを強く胸に抱いているのかもしれません。
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