感情労働に、どうぞ大いなる敬意を!
感情労働という言葉をご存知でしょうか。
頭脳労働や肉体労働と並んで称されますが、
その場に適した表情や声、態度の提供こそが重要な仕事のことだそうで、
接客業がその代表例だそうです。
「お客さまは神様です」という風土が残る日本では、
顔で笑って心で泣いて…こころの負担が他より大きくなりがちなお仕事です。
(接客業では、頭脳も肉体も大いに使うことはもちろん承知しています。悪しからず。)
介護事業を主事業とする会社がありました。社員の多くは介護士さん、感情労働をされていました。
彼らの離職率は高く、お客さまの評価は低下傾向にあり、経営者は困っておりました。
一番困っていたのは社員さんです。辛くて続けられず、しぶしぶ転職に活路を見出そうとしました。
ところがあることを境に、その会社の離職率は急激に良化しました。社員が辞めなくなりました。
社長が全国の社員全員と順に、グループ座談会を開きました。
社員には事前にアンケートし、会社への思いや要求を自由に記述してもらっていました。
社長と人事はそれを受けて対策を検討しつつ、それを踏まえて座談会に臨みました。
ただ、要求に応える見通しが立つのは一部で、多くは保留でした。
それでも社員は、社長との座談会をたいへん快く受け入れました。
社長は皆さんを大いにねぎらわれ、日頃の活躍にお礼を言われたそうです。
要求に応えようと努めて検討したこと、一部は応える予定が立ったこと、
応えきれない事情があることを、社長は心をつかって伝えたそうです。
社長と直に交流した社員はその人柄にほっとし、息がつけたのではないでしょうか。
自分の感情を抑えることを生業とする方は、そのストレスを発散できないとバランスが崩れます。
介護士さんの中には、ストレスの矛先が会社や社長に向く方もおられたと思います。
アンケートで気持ちを書き出したところ、社長はそれを受け止めて、応えようとしてくれた…
しかも、自分たちの仕事がたいへんで、会社に役立っているとしっかり認めてくれた…
ストレスが軽減したばかりか、働く意欲が湧くような思いだったと思います。
そもそも介護士のみなさんは、この会社とこの仕事に誇りをもって働きたかったのでしょう。
感情を抑制・促進することは、大きなエネルギーを消費すると言われます。
つまり、感情労働は疲弊しやすく、ストレスがたまりやすいのです。
「今日も一日、ほんとうにお疲れさまでした」、
「〇〇さんのお陰で助かりました、ありがとうございました」と、
こころからの言葉がけを、どうかいっぱい差し上げてほしいと、願います。
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