こころがおだやかなのが、一番いいなぁ
『こころがおだやかなのが、一番いいなぁ』
冒頭の台詞は、
映画「マルサの女」に登場する実業家、50歳くらいの男性が、つぶやいた一言です
つぶやいた彼の目は、ふたりの幼児が、公園で無邪気に走り回る様子をとらえます
そして、そんな様子を見るとこう感じると、付け加えます
「心が掻きむしられるようになるんだ」
彼には脱税の疑いがあり、それをマルサ(国税局査察部)が調査し摘発します。
その戦いの様子が、この映画です。
彼は、裏社会、脱税、資産家、狡猾、なかなかの大物という人物像です。
そんな彼からは、冒頭の台詞がいささか違和感を感じます
彼のもうひとつの人物像が、この映画のもうひとつのテーマでしょう
人には、他人に見せられない心の内がある、
いや、
他人どころか
自分自身ですら気づかぬよう蓋している心の内がある…
社会的には極悪人を徹底して装う彼の心は、
凪のような穏やかな心を求めている
極悪人を装うことで、ようやく本音に蓋している、
それなのに
穏やかな様子を目の前にすると、
蓋が開く…心が無性に荒々しく波だつ…苦しくなる…
そして、蓋を急いで閉じたくなる
彼は、蓋を開き始めます。
その様子がまた、心を打ちます。
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