85歳を過ぎたひとりの男性のお話を聴いてください

85歳を過ぎたひとりの男性のお話です。

中年の方、ご両親がご高齢でご存命な方に、特にご一読をしていただきたいです。

 

頭脳と体力に恵まれた彼は、大きな企業で大いに出世を果たしました。

愛する女性を妻として、娘、その夫、孫にも恵まれました。

強い自信と信念をもって、自分の人生を貫き生きてきました。

大いに働き、大いに楽しみました。家族や自分、会社も仲間も大切にしました。

みんなに頼りにされ、それに応えてきました。

定年退職後も、自らの探求心を元に、学び続けました。家のことに家族のことに活動しました。

生きる姿勢はそれまでと変わりませんでした。

しかし、病魔が、老い故の衰えが彼を襲いました。妻の病が彼を襲いました。

 

彼は娘夫婦を頼るような頼らないような…夫婦二人で何とかやっていく姿勢をとりました。

しかし、現実の厳しさに苦悩を始めます。なぜなら、

etaxやict前提の各種手続きは、頭脳明晰で認知機能を維持している彼ですら難しすぎる。

車の運転にはすっかり自信が持てなくなって、もう手放すしかない。

身体が常に悲鳴を上げている。病とともに生きるのは辛い。ゆっくり眠ることもできない。

妻は病で家事があまりできなくなった。日々の買い物や料理やゴミ出し…やることが多すぎる。

終活をしなければ、娘夫婦がたいへんになる。20代の孫の将来が心配…俺になにができるだろうか。

今でも毎日新聞や書籍を読み、社会がどうあるべきか考えるが、議論できる仲間はみな逝った。

この家は私の建てた城である。ここを出るつもりはない。ただ、決して楽に生きれる場所でない…。

 

恐ろしい病にも一人立ち向かい、気力と体力で、医師が難しいとした完治に至りました。

ただ、病は複数あって、彼の体力と健康は著しく損ないます。

そんな彼を襲う数々の困難な現実、自ら貫きたい信念、それらとどう折り合いをつけるのか。

そんな彼が、ふと漏らした本音。

「もう逝ってしまいたいよ…生きるのは辛い…もうあと1年だなぁ…」

涙がこぼれます。沈黙が流れます。

 

「1年経ったら、またおっしゃってください、あと1年だなぁって。気がつけば90歳…100歳…」

「何を馬鹿なこと言ってるんだ!私の父は82歳で亡くなったんだよ。……………

でも母は94歳だったなぁ…あぁまだまだ先だなぁ…うん…うん(笑顔)」

 

彼ほどの能力と体力と信念がありながら、現実場面で成功を収めてきた人物でありながら、

死を迎えんとするこの歳においても試練のただなかにいる様子を感じると、辛い気持ちになります。

ただ、信念を貫かんとする姿勢を堅持して全うする彼を支援したい、

ときにはこころの安楽を提供していきたいと、ささやかな支援しかできないですが、

決して彼の信念の邪魔はしない、それがよいのだと思っております。

 

長々と読んでいただき、ありがとうございます。

皆さまの人生の際まで幸多かれと、こころよりお祈りいたします。

タンチョウヅル

投稿者プロフィール

青木 亮
青木 亮くれたけ心理相談室(名古屋本部)心理カウンセラー 産業カウンセラー
こんにちは。広い空や海の開放感が大好きなものですから、
自分への日々のご褒美には、広い空間の体感かスイーツやお酒少々です。
皆さんの明日が今日よりも、明後日が明日よりもステキでありますように。

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